「炭焼きレストランさわやか」が凄い理由を分析する【LTVが高い】

こんにちは、シンヤです!
今回は「炭焼きレストランさわやか」が凄い理由を分析する【LTVが高い】というテーマでお話しします。
「炭焼きレストランさわやか」とは?
Little-po - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=69149802 による
簡潔に言うと、静岡県にしか店舗を持たない、ハンバーグを提供するレストランです。
静岡県外や外国からも人が大勢来ます。
さわやかは国内外問わずファンが多いのに、店舗運営の方針だけ見ればとても不便です。
- 静岡県内にしか店舗がない
- 予約が出来ない
- テイクアウトができない
- 「肉だけ冷凍して販売」ということもしない
- ネット販売もしない
つまりさわやかのハンバーグを食べるなら、どうやっても静岡県まで赴いて、実際の店舗へ予約なしで行くしかありません。
平日でも県外からお客さんが来ていて混んでいるので、現地人はあまりさわやかに行きません。
なのになぜ人気が高いのか?
店舗としてこんなに不便なのに、なぜ人気なのでしょうか?
僕はこの「さわやかの人気の秘密」に、新しいマーケティングの答えがあると思っています。
裏を返すと「不便でも利用したい」ということですからね。
つまり「さわやかの強力なファンになっている」ということです。
ちなみに上記の不便なのにもしっかりと理由があります。
そしてこの「不便さを貫く理由」こそ、同時に「強力なファンを獲得できる理由」にもなっています。
「炭焼きレストランさわやか」が凄い理由
僕は以下のように分析しました。
- 地方に特化
- 絶対に品質の劣化を許さない
- 食体験に非常に強いこだわりを持っている
理由1:地方に特化
地方に特化というより「こだわり抜いた結果、地方に特化せざるを得なかった」という方が正しいかもしれません。
さわやかで使うお肉は・・・
全て袋井市にある、自社工場から出荷されているから
です。
別会社が運営している加工工場があったりとか、肉の卸だけして外注するということをしていません。
その日その曜日に使う肉の量を事前に計算して発注します。
当日に届いた肉は当日使い切るのが原則なので、工場から遠く離れた地方には出店しません。
理由2:絶対に品質の劣化を許さない
これは先ほど述べた「肉の量を事前に計算して出荷する」「当日届いた肉は当日使い切る」も同じですね。
さわやかは他社とは比較にならないほど、肉の品質に拘っています。
例を挙げると・・・
- 当日に使う肉の量を計算して出荷する
- 当日届いた肉は当日使い切る
- 牛肉100%で、オーストラリアの指定牧場牛しか使わない
- 徹底した殺菌処理と遺物検査を実施
- 冷凍保存は絶対にしない
という感じです。
冷凍保存しないから、肉だけ販売することもしないし、ネット販売もしません。
理由3:食体験に非常に強いこだわりを持っている
さわやかのこだわりをまとめると、上記であると考えます。
「食事の体験設計」に非常に強いこだわりを持っています。
店頭で料理を食べる際の体験にもこだわりを感じ取れます。
例を挙げると以下の通り。
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お店から認定を受けたスタッフが、肉を切り分けて鉄板で焼いてくれる |
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テーブルに敷かれている紙が、静岡の観光案内になっている |
![]() |
鉄板で肉を焼く際は、紙を肉汁よけとして使う |
こんな感じです。
どれも「さわやかでないと体験できないこと」だと思います。
この食体験があるから、リピーターが絶えないのだろうと思います。
料理の味も大事ですが「お店でしか体験できない何か」がないと、差別化って難しいですからね。
「体験を売る」という考えは、UX設計でも非常に大事な要素であると僕は考えています。
いかにして「体験を売るか」を常にデザイナーは考えています。
商品より「モノを通じて得られる体験に価値を感じる時代」です。
さわやかは「食体験を売っている」のです。
これは代表取締役である「富田 玲」氏のメッセージからも見て取れます。
さわやかはLTVが高い
LTVとは「Life Time Value(顧客生涯価値)」の略で、顧客一人がどれだけ利益を生み出し続けるかということです。
以前書いたリカーリングレベニューの記事にも書きましたが、人々が求めるものが「モノ」ではなく「モノを通じて得られる体験」にシフトしています。
一度売ったら終わりという「売り切り型」のビジネスモデルが崩壊しつつあります。
今後は継続的に売り上げを出す「繰り延べ型」の売り方へシフトしていきます。
だからこそ昨今、顧客一人一人と長期的な関係を結ぶ為に、CRM(顧客関係管理)を最適化したり、LTVを最適化しようとする企業が多くあります。
さわやかは、
- 不便でも利用する
- 固定ファンが非常に多い
- 他県や海外からも多数のお客様が来店する
- 地元民や他県の人からも信頼が厚い
マーケティング的にいうと「LTVが高い」と言えます。
つまり昨今IT業界で注目されている「体験を売って固定客を獲得する」を、20年以上前から飲食で実践している企業なのです。
これは非常に凄いことであると、僕は考えています。
CRMやLTVは概念自体は3~4年前にはありましたが、注目され出したのはここ1年ぐらいです。
商品の売り方という観点において、IT業界は完全に負けていると思います。
さわやかを参考に今後IT業界で活かせるマーケティング
主に以下があるのではと思っております。
- 「他のサービスが、できるけどやらないこと」を徹底的に突き詰める
- お客様の声を鵜呑みにせず「顧客はこれが欲しい」と思うサービスの仮説を立てる
「他のサービスが、できるけどやらないこと」を徹底的に突き詰める
さわやかで例えると、以下の通りですね。
- (お金かかるけど)自社で工場を持つ
- (効率悪いけど)静岡県内でしかビジネス展開しない
- (品質管理が大変だけど)厳選したオーストラリア牛しか使わない
括弧の部分が、他の会社が躊躇する箇所です。
括弧さえ無視すれば、同業他社でもできるサービスであると思っています。
まず「同じ人が運営しているサービス」なので、あらゆるサービスは自分しかできないということは、ないと僕は思っています。
それでも考え抜いて、他ではやらないことをあえてやることで「独自性」が生まれると思っております。
他がやっていないことを突き詰めれば、時間が経てばそれは「独自性」になります。
独自性は「差別化」に繋がり、やがて「競合優位性」に昇華します。
お客様の声を無視して「顧客はこれが欲しい」と思うサービスの仮説を立てる
自動車を作り出した「ヘンリー・フォード」の名言の一つに、
もし顧客に意見を聞いて新しい商品を開発していたら、私は「速い馬車」を開発していただろう
があります。
フォード存命の当時は移動手段は「馬車」が主流だったので、無理もないかと思います。
ですがフォードは、本質的には馬車も車も「速く移動できる体験が欲しいだけ」としました。
結果、馬車の改良をせず車の開発を成功させました。
「さわやか」であれば、顧客に意見を聞けばおそらく、
安くて美味しい料理が食べたい
と言うと思います。
顧客は極論を言えば「腹を満たせれば何でもいい」ので、安く沢山食べられれば満足します。
ですが「さわやか」は「静岡でしか提供できない食体験」にこだわり抜きました。
結果、県外や国外からも固定客を獲得するに至りました。
「顧客は本当に欲しいものは、絶対に自分から言わない」
顧客の意見の裏に隠された「要望」を汲み取り、仮説を立てサービスを改善するのが大事であると、私は思います。
まとめ
- 「炭焼きレストランさわやか」の人気が高い理由は「食体験の提供に非常に強いこだわりを持っている」から
- モノではなく「モノから得られる体験」が、今後商品を売る鍵になる
- だから「LTV(顧客生涯価値)」が重要視され始めている
- 他のサービスができないことをやり、顧客の声を鵜呑みにしない
- 顧客は本当に欲しいものは自分から言わない
- 顧客の声とデータから、仮説を立てて小さくサービスの体験を改善し続ける
今回は以上になります。
- 「炭焼きレストランさわやか」が凄い理由を分析する【LTVが高い】